ハードディスクドライブ
ハードディスクドライブ(英: Hard disk drive、HDD)は、磁性体を塗布した円盤を高速回転させ、磁気ヘッドを移動させることで、情報を記録し読み出す補助記憶装置の一種である。
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編集 名称
「ハードディスクドライブ(HDD)」「ハードディスク」「ハードドライブ」「磁気ディスク」「固定ディスク」などと呼ばれる。JIS情報処理用語では「ハードディスク」である。
構造的には、本来は回転する円盤(円板)が「磁気ディスク」または「ハードディスク」で、回転軸やモーターなどの駆動装置を含めた全体が「磁気ディスクドライブ」または「ハードディスクドライブ」であるが、特に区別せず呼ばれることも多い。また、ディスクが駆動装置やコンピュータ本体などに固定され、容易には着脱できないものが多かったため「固定ディスク」とも呼ばれる[1]。現代のハードディスクドライブの大半は金属製の筐体でほぼ密閉されているため、「密閉型ハードディスクドライブ」とも呼ばれている。
歴史的には、当初は「磁気ディスク記憶装置」または単に「ディスク装置」と呼ばれていた。またコンピュータから見たアクセス特性より、当時の磁気ドラムなども含め「DASD」とも呼ばれた。しかし後に「柔らかいディスク」を意味する「フロッピーディスク」(またはフレキシブルディスク)が登場すると、その対比で「硬いディスク」を意味する「ハードディスク」の名称が一般化した。なお「ウインチェスター・ディスク」(Winchester disk)もハードディスクの別名とされた時代もあったが、本来はIBM 3340の開発コード名である。
編集 概要
円盤(ディスク)がアルミニウムやガラス等の硬い(ハードな)素材で作られていることから「ハードディスクドライブ」と呼ばれる。パーソナルコンピューター用の補助記憶装置では、かつて主流の位置を占めていたフロッピー・ディスク・ドライブより、遥かに大きい記憶容量を持ちアクセス速度も非常に高速である。
元々、メインフレームの補助記憶装置として利用されていたが、現在ではパーソナルコンピュータを含めたあらゆる汎用のコンピューターや、大容量のランダムアクセス記録を必要とする業務用専用装置にて用いられている。
ハードディスクドライブはその構造上、耐久性に問題の多い記憶装置であり消耗品である。経年変化でベアリングの磨耗のような機械加工部品のがたつき等により読み書きの障害が高頻度で発生したりする。また衝撃でクラッシュすることもある。一見正常に動いているように見えて、一部破損によってデータが間違ったり、何の前触れも無く動作不能に陥ることもある。重要なデータが入っている場合は、定期的にバックアップを取るなどの対策が必要である。バックアップを取っておらずにデータが消えた場合のユーザー向けに、データ復旧ソフトウェアやデータ復旧サービスを提供する業者も存在する。
編集 歴史
詳細は「ハードディスクドライブの歴史」を参照
世界最初のハードディスクは1956年のIBM 305 RAMACの一部として登場した、IBM 350ディスク記憶装置である。直径24インチ(約60cm)のディスクを50枚も重ねたもので、ドライブユニットのサイズは大型冷蔵庫2個分程もあるが、約4.8MB(原稿用紙5000枚程度)の記憶容量しかなかった(IBMのディスク記憶装置を参照)。
2000年代に入り家庭電化製品のデジタル化が進み、音声映像等のデータをデジタルデータとして記録する用途が生じてきたことから一般の家電製品での利用も増え始めた。容量単位の価格が安価で大容量、ランダムアクセスが可能で、下記のRAMディスクには劣るがアクセス速度も比較的速く、さらに書き換え可能という特性を生かし、2003年以降、特にハードディスクレコーダーやデジタルオーディオプレーヤーといった用途での搭載が増加している他、カーナビゲーションにも搭載され、地図情報の保存等に利用されている。
2009年現在、上記の家電製品やパーソナルコンピュータ等での使用においては、筐体内に内蔵する方式が多いが、本体とは別の外付ユニットをUSBやIEEE 1394等の通信ケーブルで接続する方式も増設用途などで存在する。また、ネットワーク上で特定コンピュータ装置に従属しない独立した外部記憶装置として利用できるNASと呼ばれる製品も存在する。
ハードディスクドライブは半導体メモリと比較して読出・書込には時間が掛かる。そのためOSから見てハードディスクドライブと同様のオペレーションで、より高速なアクセスを実現するための工夫もされてきた。 2009年現在では、主流である3.5インチサイズのHDDの記憶容量は、1台で最大2.0TB(1.81TiB余り)に達している。また、ノートパソコンでよく用いられている2.5インチ9.5mm厚サイズのHDDの記憶容量も、1台で最大750GB(698.49GiB余り)に達している。
近年では小型化や低消費電力を重視する傾向が強まり、出荷台数ではPC用で主流の3.5インチサイズばかりでなく、それまではノートPCが主な用途だった2.5インチサイズ以下のHDDがゲーム機やサーバ用途を中心に需要が広がっている。2007年のHDD国内出荷台数は、2.5インチ以下のHDDが全体の53%となっている[2]。
編集 構造
編集 基本構造
ハードディスクドライブの基本構造は、音楽レコードプレーヤーに類似している。レコード盤に当たる円板がプラッタ(ディスク)、針に当たる物が磁気ヘッド、および磁気ヘッドを搭載するアームから成り立つ。アームは円板上を1秒間に最高100回程度の速度で往復でき、これによって円板上のどの位置に記録されたデータへも瞬時にヘッドを移動して読み取り、書き込みが可能である(ただし円板上の記録情報は、レコードでは螺旋状だが、HDDでは同心円である)。
磁気ヘッドを搭載するアームは、以前はリニアアクチュエータとステッピングモーターが主流であったが、ディスク・パックから密閉型に、サーボ面サーボからデータ面サーボに移行する 1970年代後半から1980年代初頭にかけて、スイングアームおよびボイスコイルに変化した(光学ディスク装置と比較すると、光学ディスクではヘッドを円盤回転軸の中心へ垂直に走査する点が異なる)。
編集 プラッタ
データを記録する円板部分を「プラッタ」と呼び、プラッタの各面のことを「サーフェス」と呼ぶ。通常、ハードディスクドライブは1枚以上のプラッタで構成されていて、それぞれのプラッタの両面または片面にデータが記録される。プラッタの数は少ない方が軽量で、故障に対する信頼性が高いことから、1枚当たりの記録密度を高くすることは性能向上のひとつの手段である。ガラス製プラッタはHOYAによって発明され、ガラス製の3.5インチハードディスク・プラッタを使った世界初の製品は、2000年にIBMから発売されたIBM Deskstar DTLA-307020である。
現在広く普及しているCSS(Contact Start Stop)方式を採用したものは、ディスク停止時には磁気ヘッドとプラッタは接触している。磁性体の層の上にはライナーと呼ばれる潤滑被膜が形成されていて、回転速度が低いうちはライナーの上をヘッドが滑る。回転速度が上がるにつれてプラッタ表面近傍の空気の流れによってヘッドが揚力を発生して、極わずかに浮き上がる。ライナーが劣化すると摩擦によりヘッドが損傷し、ヘッドクラッシュという現象を起こす。一般に、密閉式のハードディスクドライブは準消耗品的な扱いを受ける場合が多く、ライナーの寿命がハードディスクドライブそのものの寿命となる。
これに対し、Load/unload方式を採用したHDDでは停止時にプラッタの外側のシッピングゾーンと呼ばれる退避位置にヘッドを退避させていて、プラッタの回転速度が規定の速度に安定した段階でプラッタ上へ移動させる機構となっている[3]。
古い時代(1980年代)のハードディスクドライブは、停止命令を送ると(NECのPC-9800シリーズでは「STOP」キーを押すと)ヘッドをプラッタから引き上げ、退避位置に移動させるようになっていた。しかし、部品点数削減と停止命令を送らないOS(MS-DOS等)の普及などといった理由から、ヘッドがプラッタ上に置かれたままで停止するCSS方式が採用されるようになった。これに伴い、「はりつき」と呼ばれる現象が発生するようになった。これは、鏡のようになめらかな面を持つ2つの物体が接触した状態で時間が経過した場合などに発生する現象で、ハードディスクドライブが起動しなくなる深刻な障害として現れる。回復させるために、電源を入れながらバケツの水を回す様に筐体を回転させたり、クッションに包んでハードディスクドライブを床に落として衝撃を与えたり、筐体を分解してディスクを手で強制的に回転させたりというような、さまざまな民間療法が考案された。後にプラッターの一部に凹凸を付けた領域を設け、停止時にヘッドをそこへ移動させる方式が採用されて「はりつき」の問題は解消された。現在のOSはハードディスクドライブに停止命令を送るようになり、特に耐衝撃性能が要求される携帯機器向けのハードディスクドライブではヘッドを退避領域に戻す機構(ドロップ・センサー機能)が再び採用されている。
プラッタに埃などの異物が付着するとヘッドを損傷する原因となるため、プラッタとヘッドの周辺は密閉されている。開封するには特殊な工具を必要としたり、「開封後は保証対象外」と書かれた封印が貼られている場合が多い。ただし、完全密閉されているわけではなく、温度変化に伴う筐体内の気圧変化を開放するため、埃フィルタを備えた圧抜き開口部が設けられている。ヘッドに働く揚力の大小は空気密度(すなわち気圧)の影響を受けることから、ヘッドとプラッタサーフェスの距離を安定に保つためには筐体内の気圧が大きく変化してはならないためである。一方、高地などの気圧が低い環境下では発生する揚力が小さくなり、ヘッドがぶつかりやすくなるため、それぞれの製品には使用環境の気圧(高度)に関する仕様もある。
プラッタは様々な表面処理技術によって進化している[4][5]。
編集 モーター
ハードディスクドライブに使用されているモーターには2つあり、1つはプラッタを回転させるスピンドルモーター、もう1つはスイングアームを駆動するシークモーターである。
スピンドルモーターはダイレクトドライブ方式であり、逆起電力を検出してセンサレスで回転数が制御されている。4,200・5,400・7,200・10,000・15,000rpmが主な回転数である。
シークモーターにはボイスコイルモーターが用いられるのが現在の主流となっている。ボイスコイルモーターはリニアモーターの一種で、2枚の磁石(主にネオジム磁石を使う)の間に配置されたコイルにかかるローレンツ力を作動原理としている。コイルはスイングアームの端部に固定されていて、スイングアームの軸を中心とした扇形の周に沿って動く。ボイスコイルモーターを利用したアームの駆動方式は小型化や高速化に有利で、1980年代後半から普及しはじめ1993年頃に一般化した。それ以前のハードディスクドライブにはステッピングモーターとリンク機構用いられていた。ステッピングモーターでは初期位置を設定すれば直接モーターの回転角度を制御できたが、ボイスコイルモーターの採用によりアームの現在位置をフィードバックするサーボ機構による制御が必要となった。初期の頃は、プラッターの1面に座標情報を記録した検出部としてサーボ制御を行っていた。現在はアドレス情報を記録データと混在させることにより、プラッターのサーボ制御専用面は廃止された。
ハードディスクドライブは起動時にサーボ情報を収集するキャリブレーションと、定期的にサーボ情報を補正するリキャリブレーションを行う。いずれもサーボ情報をメモリに保持し、ヘッドの動作速度を向上させるための動作である。時にこのリキャブレーションが問題となることがあった。Windowsなどで使われたコンシューマー用ハードディスクはサーボ情報収集中、ドライブへのアクセスを待機させても支障は無かった。しかし、FreeBSDなど一部のOSではこの待たされている間にタイムアウトが発生してドライブが切り離され、場合によってはOSがクラッシュするという事態が生じた。このため両者はそれぞれ改良を行い、サーボ情報収集中にアクセスがあった場合にはリキャリブレーション動作を中断してアクセスを受け入れ、またOSはリキャリブレーション動作の可能性を含めたタイムアウト時間を設定した。近年のハードディスクドライブは一度にサーボ情報を読むのではなく、定期的に通常のディスクI/Oに1トラック/1秒程度の間隔で割り込ませ、サーボ情報の補正を行っている製品が多い。アクセスの少ない深夜などに、ハードディスクドライブが「カリカリ」という音を立てることがあるのはこのためである。
編集 軸受
ハードディスクドライブを構成する回転構造のうち、プラッタの回転軸には、玉軸受(ボールベアリング)や流体動圧軸受(Fluid Dynamic Bearing;FDB)が用いられている。
玉軸受を使用する場合には、軸受から生成する磨耗粉などの侵入を防ぐためにシールが不可欠であり、シール性能の高い磁性流体シールが主流となった。
流体動圧軸受はモーターの軸と軸受の間がオイルで満たされている。停止しているときは軸と軸受が接しているが、回転することにより潤滑油に動圧が発生して軸と軸受が非接触状態となる。そのため回転抵抗が非常に低く、静音で長寿命であるため、近年では流体軸受の方が主流である。オイルシール部は撥油膜(オイルをはじく)で被われており、大きな衝撃を加えない限りは潤滑油は飛散しない。停止している状態や回転数が低いうちは接触による摩擦抵抗が大きいため、大きな起動トルクが必要となる。このため、流体軸受を採用したドライブの最大消費電力はボールベアリングを採用したドライブよりも高めになる。また、極端に環境温度が低下するとオイルの粘度が高くなり、十分な動圧を発生できるほどの流動性を失うことから、機器の使用環境温度の下限が軸受の特性によって支配される場合がある。
いずれの軸受の場合でも、長期にわたる使用により摩耗したり劣化して回転抵抗が増加する。これによりプラッタの回転速度が不安定となりデータの読み書きにエラーを発生するようになるのが、軸受の寿命によるハードディスクドライブの故障として多い例である。
編集 ヘッド
プラッタ上の磁性体に磁気を与えたり、読み取ったりする部分をヘッドと呼ぶ。
基本構造は磁性体にコイルを巻いた電磁石で、アクセス領域の微小化に伴いコイルをエッチングによって磁性体の表面に生成した薄膜ヘッドが用いられている。また、読み取り用には磁気抵抗効果の利用により高い感度を持つMRヘッド(Magneto Resistive head)が採用され、記録密度の高密度化を可能にした。MRヘッドにはさらに高感度な巨大磁気抵抗効果を利用したGMRヘッド(Giant Magneto Resistive head)や、GMRヘッドよりも高感度なトンネル磁気抵抗効果を利用したTMRヘッド(Tunnel Magneto Resistive head)といった物が開発され、現在ではTMRヘッドが主流となっている[6]。一方、書き込み用のヘッドはコイルと磁性体の組み合わせによる原理に変わりがないが、記録する磁気の方向がプラッタ面に平行な水平磁気記録(LMR, Longitudinal Magnetic Recording)から、プラッタ面に垂直な垂直磁気記録(PMR, Perpendicular Magnetic Recording)へと移行して記録密度の高密度化を実現している。
編集 インターフェース
現在使用されているハードディスクドライブの内蔵インターフェースには、大きく分けてATA系とSCSI系がある。
外付けインタフェースとしては、古くから使われているSCSIの他にUSBやIEEE 1394で接続するのが一般的となってきているが、ハードディスクドライブ本体のインターフェースはATAやSCSIであり、ハードディスクドライブ・ケースに内蔵された変換基板により相互変換されている。外付けインターフェースの一種として、ネットワークからTCP/IP接続出来る様にしたNASも徐々に普及してきているが、これもハードディスクドライブ本体にはATAまたはSCSIのものが使われる。
現在、コンシューマー市場の主流は、内蔵用ハードディスクドライブで、ATAインターフェースを採用した製品である。SCSIは機能面は豊富であったがそれに伴い非常に高価であったのに対し、ATAは低コストで製造できたため急速に普及し、PC/AT互換機に標準搭載されることでデファクトスタンダードとしての地位が決定的となり、後には、PC/AT互換機で一般的に使われるチップセットにはATAコントローラーが含まれるようになった。そして、これらの効果により生産量が増えたATAハードディスクドライブが量産効果によって更に安価になっていった。これに対して、SCSIハードディスクは、ハードディスク単体の値段の差もさることながら、多くの場合SCSIインターフェースボードを購入する分高コストになったため、一般用としてはあまり利用されず、現在では各種サーバ用途での利用が主である。
編集 コントローラ
ヘッドにケーブル、もしくはフィルム基板の形で直結されているピックアップアンプからインターフェースまでの間に、コントローラ基板を搭載している(メインフレームの時代には別体であった時代もあった)。一般的にこの基板は、それ自体が独立したマイコンで、モーターやヘッドのサーボ制御・位置決め・トラック位置に応じた書き込み電圧の制御・読み書きする際の変調・インターフェースとのデータの入出力・キャッシュメモリの制御等を行う。1990年頃から更にタグ付キューイングと遅延書き込みを担当し、OSの負荷を軽減した。1990年半ばからIDEハードディスクドライブでは、DMA転送モードに対応し始めた。しかしUltra DMAの登場まで活用されなかった。
高機能なコントローラ(主にSCSIで)は、ハードディスクドライブ間の通信をサポートしている。例えば、ファイルを別のハードディスクドライブにコピーする時、コントローラがセクタを読み取って別のハードディスクドライブに転送して書き込むといったことができる(ホストCPUのメモリにはアクセスしない。言い換えればその操作中CPUは別の仕事ができる)。また、他のハードディスクドライブのサーボ情報と連携を取り、複数のハードディスクドライブのスピンドル・モーターの回転を同調することができる(スピンロック)。これはRAIDにおいてアクセス速度を向上させるのに役立ったが、近年のデータ読み書き速度の向上と、大容量のキャッシュメモリを備えること、バスマスター転送による非同期I/Oの普及により、この機能は廃れている。この機能の廃止に伴いハードディスクドライブ同士の共振による振動がアクセス速度や信頼性に影響を与えることになったが、ハードディスクドライブ・メーカーは振動を検知して共振を打ち消すようにモーターを制御する技術をスピンロックに代わり提供するようになった。
かつて、SASIインターフェースを備えたSASIハードディスクドライブが主流であった頃、コントローラは2種類のインターフェースを持っていた。一つはホストCPUとつながるためのSASIインターフェース、もう一つはスレーブコントローラ(ST-506仕様)を接続するための拡張インターフェースである。しかしベアドライブを除くスレーブとなる製品が市場にほとんど出回らなかったことから、SASIハードディスクドライブはホストCPUに一台しか繋がらなかった(PC-9800シリーズ用SASI外付けドライブは、コントローラ内蔵の1台目用と、ST-506だけの増設用が別々にあった)。SASIハードディスクドライブは時代の変遷と共にその座をSCSIハードディスクドライブに譲った。時代的誤認が散見され、SASIの後継がIDEと認識されている場合があるが、SASIはSCSIの直接の先祖であり、電気的特性も近く、ソフトウエアで工夫することでSASIインターフェースをSCSIインターフェースとして動作させられるほど、この2者の関係は深い。
特殊なコントローラとして、ESDIインターフェースとSCSI,SASI,IDEインターフェースを仲介する外付けコントローラが存在した。このコントローラは旧時代のESDIハードディスクドライブ・インターフェースと、近代的なハードディスクドライブ・インターフェースの橋渡し役として機能した(初期のSASI,SCSI,IDEハードディスクドライブはこのコントローラを内蔵していた)。SCSI/SASI/IDE→ESDIに変換するタイプのコントローラの中身は、現代のハードディスクドライブのコントローラそのものに近い。ESDIはそのベースとなったST-506を改良したインターフェースIDEが作られ、その座をIDEハードディスクドライブに譲った。
編集 フレーム
フレームは構成部品を保持する部品で、現在ではアルミダイカスト製の箱形として気密構造を形成するケースと一体化した物が広く普及している。初期の大型の物はケースとは独立したフレームになっていたことからこの呼び方が残っている。スピンドルやスイングアームピボットの取り付け部は特に高い寸法精度を要求されるため、単一部品のフレームにすべての部品が保持されている。フレーム内部は空気の流れをコントロールする形状に作られていて、ダストトラップと呼ばれる部品に空気を誘導して、内部で発生した塵をトラップで永久に固定する。
コンピュータ本体へ固定するためのネジ穴は4点で1組の構成となっているが、複数ある規格に対応できるように複数組用意されていて、一般に3.5"ドライブのネジ穴は3組、それより小さいドライブは2組以下である。
編集 パーティション
ハードディスクドライブは1台で大容量を利用出来るため、利用方法に合わせて内部を区画(パーティション)に分割出来る。個々の区画を別々のOSで利用することも出来る。
編集 フォーマット
かつて、ハードディスクドライブはフォーマットして使用するデバイスであった。このフォーマットは、物理フォーマットと論理フォーマットにわけられ、前者はサーボ情報からセクタ情報まで全てを再構築するものであり、後者は前述のパーティションを作成する際に不良セクタ情報を集めて、それらを予備領域で代替し、ファイルシステムを構築するものである。
現在のハードディスクドライブは物理フォーマットを行う為の条件が厳しく、温度・湿度・振動・電源・またその他いくつかの条件を厳密に管理しないと設計された容量でフォーマットする事は難しい(外乱を受けると、その瞬間に扱っていたセクタは使用不能になる)。この為、ハードディスクドライブは物理フォーマットコマンドを廃止したり無視する傾向にある。
かつてハードディスクドライブは欠陥セクタリストがアクセス可能であり、このリストによって欠陥セクタを取り除いた領域がユーザー領域となっていた。このリストの長短がハードディスクドライブのクオリティであり、また使用中にこのリストがどれだけ増えるかが、管理者の頭痛の種であった。このリストの為に用意された領域が溢れた時は、不良セクタが代替不能になり、アクセスするとエラーが発生する。論理フォーマットによってスーパービットマップ等で蓋をしないとアプリケーションの動作不良といった不具合の原因になる。
現在のハードディスクは欠陥セクタリストが見かけ上0である「ディフェクトフリー」ハードディスクドライブである。もちろん物理的にそのようなハードディスクドライブを製造する事は不可能である。実際には、ユーザーがアクセス不可能な領域に冗長領域を持ち、物理フォーマットの時点で問題のあるシリンダやセクタをスキップしてある。セクタにサーボ情報が埋め込まれているので、不良シリンダやセクタはシーク時点で自動的にスキップする。またデータ記録にはリード・ソロモン符号等を使う事でエラー訂正し、ビットレベルの点欠陥は事実上無視できる。記録密度向上によってS/N比は低下する一方なのでエラー訂正技術は現代のハードディスクドライブにとって不可欠な技術となっている。
当初からハードディスクドライブのセクタサイズは1セクタあたり512バイトであったが、記録密度の向上に伴い、セクタサイズが4,096バイト(これまでの8倍)となっているハードディスクドライブが2009年終わりごろから出回っている。これらは「Advanced Format Technology」(AFT)と呼ばれ、Windows Vista/7といった最近のオペレーティングシステムではそのまま利用可能であるが、Windows XPでは、512バイト以外のセクタサイズのHDDではパフォーマンスを引き出せないため、ベンダー提供のツールもしくはジャンパピンなどの再設定が必要である。
編集 容量の壁
詳細は「容量の壁」を参照
ハードディスクの容量は常に拡大し続けてきたわけであるが、その際に古いファイルフォーマットやOS、BIOS等による制限により利用できる容量に上限があった。これを通常「壁」と称される。主なものとしては、512MB、540MB、1GB、2GB(FAT16の最大値、パーティション毎)、4GB、8GB(BIOSの制限)、32GB(一部のAWARD BIOSの問題)、64GB(Windows98のFdiskの問題。修正プログラムがある)、128GB、137GB(Big Driveに対応していない場合の制限値)などがある(特記ないものはドライブ毎)。 今後2TB(FAT32の最大値、パーティション毎 およびMBR方式のパーティションテーブルのセクタサイズ512バイトでの最大値[7]。)、128PB(Big Driveの最大値)などに壁が存在する。
編集 サイズ
2008年現在のコンピュータで利用されているものは、ほとんどが3.5インチや2.5インチサイズのプラッタである。小さなものでは、コンパクトフラッシュサイズのマイクロドライブ、iVDR (Information Versatile Disk for Removable usage) 等もある。小さいサイズのドライブは、2006年以降、急速に大容量・低価格化するフラッシュメモリと競合しており、小型のものから順に市場が縮小しつつある。
- 8インチ
- 大型汎用コンピュータ用途。1980年代まではパーソナルコンピュータ用途でもあった。現在は生産されていない。
- 5インチ
- 大型汎用コンピュータ、1990年代半ばまでのパーソナルコンピュータ用途。現在は生産されていない。
- 3.5インチ
- 1990年代以降、現在のデスクトップパソコンやサーバ、ワークステーション用の主流。なお、回転数が15000rpmに達するような、サーバ、ワークステーション向けドライブでは、躯体は3.5インチ用のものでも、内蔵されているプラッタはそれよりも小さいものが多い。インターフェースはサーバ用途ではほとんどがSCSIであるが、一般市場向け製品のインターフェースは2005年ころを境に、パラレルATAからシリアルATAへと移行している。
- 2.5インチ
- ノートパソコン用の主流。3.5インチに比べ容量あたりの価格は高いものの、消費電力が少なく、耐衝撃、耐振動性に優れることから、最近では一部のデスクトップパソコン、カーナビやゲーム機(XBOX360、PS3)でも利用されている。一般向けインターフェースはパラレルATAのものとシリアルATAのものの両方があるが、3.5インチと同じくパラレルATAの新製品は減少しており、2007年以降はシリアルATAが主流になっている。近年SCSI規格の2.5インチ型が復活し、こちらは従来のノートパソコン向け低性能・低消費電力型ではなく、サーバ向けの高性能・省スペース型となっている。特に環境問題に配慮し消費電力を抑える傾向にあるデータセンターなどで多く用いられている。
- 1.8インチ
- 大部分の小型軽量タイプのノートパソコン用、iPod(現iPod Classicシリーズ)に代表される携帯型音楽プレーヤ、携帯型ビデオプレーヤ用。ハードディスクPCカードのモバイルディスクという単体商品もあった。1.89インチと扱われる場合もある。ノートパソコン用としては2.5インチと接続コネクタ形状が同じ日立GSTタイプとPCカード型(ただしモバイルディスクとは異なりPCカードスロットには対応していない)の東芝タイプがある。現状では、一時はこの分野に参入を計画した富士通は参入を断念。日立は、自社向け中心に生産していたが不採算を理由に生産中止を表明。2008年時点の事実上、東芝とサムスン電子のみが生産するモデル。
- 1.3インチ
- HP製キティホークなどの例があったが、基本的に採用例の少ないサイズ。2008年時点でサムスン電子のみ生産していたが、フラッシュメモリに押されて生産中止となった。
- 1インチ
- 単体ではマイクロドライブと呼ばれる商標のものが一般的に知られている。高性能デジタルカメラや小型携帯型音楽プレーヤー、PDAにも採用された。フラッシュメモリとの競合で、2008年頃にはほぼ完全に廃れている。
- 0.85インチ
- 超小型。東芝が2003年に開発。自社の開発するデジタルビデオカメラに使われている。その他にも、COWON社のデジタルオーディオプレイヤーiAudio6や、2006年2月に発売された東芝のau(KDDI / 沖縄セルラー電話)向けの音楽機能を重視した携帯電話のMUSIC-HDD W41Tにも搭載されている。内部のプラッタは0.85インチ=21.6mmで、これは五円硬貨とほぼ同じサイズ。2007年以降から同サイズでの新製品が発表されていない。
2009年現在ではほとんど意識する必要もないが、少し前までは厚さによる差異も存在した。
- ハーフハイト
- 41.3mm。2000年以前の高性能3.5インチSCSIHDDに用いられた厚さで、プラッタ5枚以上・磁気ヘッド10個以上の構成となっていた。その後の記憶密度の向上により、これほどのプラッタを内蔵する必要は無くなり、現在では少数の中古品が流通しているに過ぎない。
- 1インチハイト
- 25.4~26mm。現在では標準的な3.5インチ型HDDの厚さ。プラッタは1~3枚。大容量製品には4~5枚もある。
- 19mm(17mm)
- 3/4インチ。2.5インチ型HDDの初期に存在した厚さ。2.5インチIDE/ATAインターフェースの物では、EIDEよりも前の時代の頃まで。一部3.5インチにも採用され、PlayStation2(後期形)用内蔵HDDに採用された。近年はSCSIやSASインターフェースでサーバー向け2.5インチHDDが登場し、主にこの厚さが採用されている。
- 12.5mm(12.7mm)
- 1/2インチ。2.5インチ型HDDの初期に存在した厚さ。各社微妙に厚さが異なっているため、中古で購入する場合は注意すること。プラッタは3枚。富士通が大容量タイプの2.5インチ型を復活させている。3.5インチ型と同レベルの容量をもちながら省電力・静音性に優れており、大型のノート・パソコンやハードディスク・ビデオ・レコーダなどで再流通している。
- 9.5mm
- 3/8インチ。現在では標準的な2.5インチ型HDDの厚さ。プラッタは1~3枚。以前は2枚が最大だったが、2008年3月4日サムスン電子がプラッタ3枚を製品化した。
- 8.45mm
- 2/3インチ。ごく一時期の東芝製2.5インチ型HDDのみ。プラッタは1枚。1.8インチ幅HDDが開発されるまでは、主に東芝製サブノートPC(初期のLibrettoやDynaBookSS等)で採用されていた。
- 6.35mm
- 1/4インチ。ごく一時期の東芝製2.5インチ型HDDのみ。プラッタは1枚。
なお、東芝製1.8インチHDDは特殊形状で、厚さが8mm(型番末尾GAH)と5mm(同GAL)のものがある。
編集 外付けタイプ
ハードディスクドライブはコンピュータの筐体に内蔵されるのみでなく、外部補助記憶装置としても利用されている。外付けハードディスクドライブはハードディスクドライブ本体を更に金属や樹脂の筐体に入れ、変換回路により端子を変換し、ケーブルによってコンピュータに接続出来る様にした物である。中には内蔵ハードディスクドライブを外付けハードディスクドライブとして利用出来るようにするハードディスクケースという専用のケースもある。これは低価格だが取り付けの手間がかかる内蔵ハードディスクドライブの利点と、手軽に使用出来るが高価な外付けハードディスクドライブの両方の利点を生かし、ハードディスクドライブを低価格で入手し、手軽に扱えるようになるものである。また、このタイプのハードディスクケースを応用して、内蔵ハードディスクドライブを交換する時に、一旦このケースに新しいハードディスクドライブを取り付けて、元の内蔵ハードディスクドライブの内容を全てコピーをした後で、再び分解して取り出し、コンピュータの内蔵ハードディスクドライブと取り替える事で、再インストールなどの手間をかけずに、ハードディスクドライブを交換するのに用いられる事もある。
接続にはSCSI、USB、IEEE 1394、ファイバーチャネル、eSATA、イーサネット等が用いられるが、ATA/ATAPI規格はケーブル長が46cm以内と制限されるため一般的には用いられない。これはATA/ATAPI規格はコンピュータ内部での補助記憶装置の接続に特化して開発されており、コンピュータ筐体外部まで配線を曳き回すことへのノイズ対策が講じられていないことによるものである。
MacintoshはFireWireまたはSCSIで、他のMacintoshと接続することで、外付けハードディスクドライブとして利用できる(接続先から起動も可能)。その他にも、コンピュータと直接接続することによって、外付けハードディスクドライブと同様に使用できるハードディスクドライブを搭載したデジタルオーディオプレーヤー(iPodなど)やモバイルコンピュータ等もある。
なお、主に企業で使用されるディスク装置は、RAID、ホットスペア、ホットスワップ、各種の複製機能などを備え、内蔵するハードディスクドライブやコントローラ・ケーブル・電源ユニットなど各部品の冗長化による可用性の向上、ディスクアレイのストライピングやキャッシュなどによる性能の向上、各種の複製機能による運用性の向上(ブロック単位の差分の世代管理による高速な多数の複製、複製先からのバックアップ取得、災害対策用の遠隔地複製など)、更には障害時の自動通知機能などを搭載した、大規模・高価なものも使用されている。またSANやNAS、更には仮想化機能により異なるメーカーの複数のディスク装置を統合して使用するなど、各種のストレージ統合も行われている。
編集 リムーバブル・ハードディスク
ディスクを取り外し可能なハードディスクのこと。あるいはハードディスクドライブそのものをカートリッジに格納して可搬性を向上したもの。かつてリムーバブル・ハードディスクは前者のみが存在した。初期の例では1962年のIBM 1311があり、洗濯機のような筐体に約4.5Kgのディスク・パックをマウントすることができたが、万一ディスク・パックを床に落とすと大変な事になった。
リムーバブルメディアにはフロッピー系(フロッピーディスク、Bernoulliディスク、Zip等)、テープ系(DDS、LTO等)、光磁気ディスク系(MO、MD等)、ハードディスク系等、様々な技術を用いた数多くの製品が今までに発売されて来たが、その内のハードディスク系のものの総称として、一般的にリムーバブル・ハードディスクと呼ぶ。ハードディスクドライブのディスク部のみをカートリッジに入れ、ヘッドや駆動部からなるドライブ本体から構成されており、フロッピーディスクやMOのように使うことが出来る。
他のリムーバブルメディアと比較してハードディスク系は、大容量(フロッピー系、光磁気ディスクよりも)、読み書き速度が高速(フロッピー系、テープドライブ系、光磁気ディスクよりも)、低価格(米国においては光磁気ディスクよりも)という点で優れており、さらにハードディスクドライブの技術がそのまま転用出来るため、新技術の導入も早かった。
1990年代前半までは、米国では広く使われていたリムーバブルメディア(日本ではMOが普及していたため、あまり使われなかったようである)であったが、構造上、埃や衝撃に弱いという欠点があり、また、以前は大容量の物を作るのが難しかったフロッピー系メディアでも、Zipやスーパーディスクのような大容量で低価格な製品が登場したことにより、メディアの価格面で対抗出来ず、現在では存在が薄れている。
5インチ、3.5インチのディスクで、様々な容量の製品が発売されていて、代表的なものにSyQuestのSQ327, EZ135, EzFlyer, SparQ、SyJetや、アイオメガのJaz、Peerless、CASTLEWOOD社のORB等があった。一時はSyQuestやNomai社を中心に、PDC(Power Disk Cartridge)というメディアの統一規格策定の動きもあったが、普及する前にリムーバブル・ハードディスク自体の人気が下火になり、消失した。現在ではアイオメガから2.5インチというMDほどの大きさのREVが、アイオーデータや日立マクセルからiVDR(日立マクセルではiVという商品名を付けている)などが発売されている。
現在では前述の通り2種類あり、ディスクのみをカートリッジに格納したものは基本的に駆動部がないなど、耐久性に優れるが大容量化にはドライブの買い替えが必要である。ハードディスクドライブそのものをカートリッジに格納したものは駆動部などが組み込まれているため耐衝撃性は前者に比べて低い。一方で読み書き部がカートリッジに収められているので、大容量化する際は大容量のカートリッジを購入するだけで済むため気軽に使い続けられる。
- 代表的な製品
- REV(アイオメガ) - ディスクとスピンドルモーターのみをカートリッジに格納したもの
- iVDR(アイオーデータ、日立マクセル) - ハードディスクドライブそのものをカートリッジに格納したもの
- RDX QuickStor(TANDBERG DATA) - ハードディスクドライブそのものをカートリッジに格納したもの。旧称TANDBERG RDX
- Relational HD(アイオーデータ) - ハードディスクドライブそのものをカートリッジに格納したもの。カートリッジハードディスク
編集 リムーバブル・ハードディスクドライブケース
一方で、内蔵ハードディスクドライブを専用のトレイやカートリッジに固定し、そのトレイをリムーバブル・ハードディスクドライブケース(リムーバブル・ケースと略される場合が多い。名称が長いため本項でも略語を用いる)と呼ばれる筐体に格納することで疑似的なリムーバブル・ハードディスクにしてしまう製品がある。これは前述のハードディスクドライブケースと内蔵ハードディスクドライブを用いた疑似外付けハードディスクドライブの利点に加え、取り外しが可能である点を活かして可搬性の向上と、ハードディスクドライブの入れ替えを容易にし、なおかつ省スペース、ケーブル類が少しで済む(単なる外付けドライブの増設ではインターフェースケーブルや電源コードだらけになる)という特徴をもつ。
前述のカートリッジタイプでは、ドライブの生産中止等によりメディアが使えなくなる場合があった。また、互換性のある上位機種が少ないため、メディア容量を増やしたい時は、ドライブとメディア全て他のものに買い換えねばならない場合が多かった。それに対してリムーバブル・ケースでは、ケースが手に入らなくなっても、他社のケースに中身のディスク・ドライブを入れ替えれば続けて使える。また逆に手持ちのケースの中身のディスク・ドライブを変えるだけで、容量の増加が簡単に行えるという長所がある。
1998年~2000年以前では、リムーバブル・ハードディスクというと、ディスクのみという構造を持ったリムーバブルメディアのもののみを指していた。しかし、それらの製品群は、1998年~2000年ごろには他メディアに押されて販売中止となる製品が続出し、陰の薄いものとなった。それに対し、このころに登場したこのリムーバブル・ケースは登場と同時に爆発的に普及し、一般に広く知られるようになった。そのため、現在ではこのリムーバブル・ケースを指すことが多くなった。但し、以前でも後述にあるハードディスクドライブそのものをカートリッジにした物でメーカー独自のノートパソコン専用ハードディスクパックを外付けSCSIリムーバブル・ハードディスクや内蔵IDEリムーバブル・ハードディスクとして利用できるアダプターが発売された事もあった(例として98NOTE用内蔵ハードディスクパックをリムーバブルドライブとして利用する周辺機器も発売された)。
2007年現在、1Uサイズからブレードサーバまで、SAS 2.5"ハードディスクドライブ用のリムーバブル・ハードディスクドライブケースを標準装備したサーバ機器が多数発売されている。SASではホットスワップ動作が規定されているので、稼動中の装置から容易にハードディスクドライブを取り出して交換する事ができる。
一部の製品は、ソフト的にパラレルATA接続でのホットスワップが可能な物があった。ただし動作の安定性・確実性には難があり、さほど一般化することはなかった。
- 代表的な製品
- REX-Dockシリーズ(ラトックシステム株式会社)
編集 ハードディスクドライブそのものをカートリッジにした物
SCSIではSCAコネクタを採用した物で、ハードディスクドライブそのものをスロットに押し込んで使うシャーシがある(これは薄型RAIDでよく使われた)。汎用リムーバブル・ケースに比べて、カートリッジ化するための部品装着の手間が不要になる、ハードディスクドライブがシャーシに接触するので放熱効率が良い、実装密度を高くすることが出来るなどのメリットがある。デメリットとしてSCAコネクタを搭載したハードディスクドライブ自体が製造数の関係で安価ではない、大容量ドライブの入手性に難があるなどがあげられる。
2.5インチハードディスクドライブはパラレルATAでも、40ピンATAのピンピッチを狭くしただけでなく、電源の4ピン分を含めた44ピンATAに、マスター/スレーブ設定ピンなどを含む50ピンATAとしてコネクタ位置が統一されている。コネクタの抜き差しも弱い力で済んだことから、ノートパソコンではハードディスクドライブそのものをスロットに押し込んで使う筐体も有った。安いベアドライブを簡単に入替えられ評判が良かったが、ノートパソコンの場合、ドライブを抜き差しする開口部を作ることすら厳しいこと、ドライブの高さが8mm/9mm/12mmと異なる高さの製品があったことから、実例は多くは無い(日立 FLORA、東芝DynaBook・ポルテジ・Libretto、IBM ThinkPadなどの一部のモデルが本体を分解しなくてもアクセス出来るスロットを備えた)。
3.5インチIDEハードディスクドライブがシリアルATA化した際に、コネクタの位置が厳密に規定されたこと、コネクタ自体がこじらなくても抜き差しできる様になったことから、従来SCAコネクタハードディスクドライブが採用されていた市場・分野にシリアルATAハードディスクドライブが進出している。SCAコネクタハードディスクドライブの欠点であった、容量の問題、価格の問題も解決しており、コンシューマー向けの5インチベイに搭載するリムーバブルシャーシから、大規模ストレージまで幅広く使われる様になった。シリアルATAコネクタを搭載した高信頼性ハードディスクドライブも登場している。
編集 リムーバブル・ケースとカートリッジ・タイプの比較
前述の通りハードディスクドライブをリムーバブルにする技術は現在2種類ある。
| リムーバブル・ケース | カートリッジ・タイプ | |
|---|---|---|
| 接続の手間 | ねじ止め、多数のケーブルの接続が必要 | SCSI等のケーブルのみ(内蔵タイプは除く) |
| 扱い易さ | ディスク着脱の度に再起動が必要で煩雑(一部製品とIDE接続以外は再起動が不要) | メディアの交換がフロッピーディスクと同様に行え、簡単 |
| 耐衝撃性 | ハードディスクドライブと同様弱い | 他のメディアよりは弱いが、持ち運びが前提の規格なので、考慮はされている |
| ディスク・サイズ | ハードディスクドライブと同じか大きめ(トレイを着けたままでは大きくなる) | MOのディスクより少し大きめ~MDより少し大きめ |
| ディスク重量 | 読み取り装置、電源ユニット等も内蔵されるため重い | ディスクのみで構成されるため軽い(規格によっては他の部品も含まれる)。ただし他のメディアよりは重い。 |
| 記憶容量 | 内蔵するハードディスクドライブによる (2GB~1TB(1,024GB)) | 使用する製品による。REVの場合35GB/70GB、iVDRの場合は30/40/80/160GB。 |
| アクセス速度 | ディスクによる(5,400rpm~7,200rpm前後) | 製品による。REV/iVDRの場合4,200rpm |
| 耐故障性 | ディスクによる。また冷却ファン電源とHDD電源を共用している場合がほとんどで、冷却ファンの故障によるノイズがHDDの動作不安定、故障を招くことがある | 機械的要素が本体装置にあり本体装置に依存する |
以上の比較から、リムーバブル・ケースは大容量のデータをディスク毎に分類する目的に適し、持ち運びにはリムーバブル・ハードディスクドライブが最適と言える。また、高いパフォーマンスが必要であればリムーバブル・ケースが望ましい。
編集 問題点
編集 品質
ハードディスクドライブは、その製造過程において高度なクリーンルームや良質の磁性体を必要とし、ドライブの品質は潤滑剤、制御基板等の品質に左右される。これらの事柄が要因となってドライブのロット不良を起こす場合がある。 高密度記録を実現するために、ディスク回転時のプラッタの保護膜表面と磁気ヘッド端部との距離、ヘッド浮上量は2009年6月現在、2nm程であり、タバコの煙の粒子より狭いため、ハードディスクドライブ内部は半導体製造工場並みの無塵度が求められる。
編集 製品寿命
ハードディスクドライブの寿命はS.M.A.R.T.で計られ、MTBF(平均故障間隔)やMTTR(平均修復時間)として推測される。一般に温度が高いほど寿命は短くなると思われているが、Googleが自社のサーバ群の故障発生率の統計から発表したデータでは、極端な高温以外の環境では温度と故障率との関連性は認められていない(ただしこれはあくまでサーバの話であり、ノートPCなどでは容易に高温に達する場合もある)。
また、個人向けのIDEと企業のサーバ用途向けのSCSIでは設計時における耐久性に格差が存在し、IDEは一日8時間使用で3年・SCSIは24時間稼動で5年を目安にしているとされるが、実際の製品寿命を保証する物ではない。結果として、5年以上故障を起こさない場合もあるし、半年もせずに壊れる場合もある。
ハードディスクドライブの寿命は前述したように環境に依存しているため、定期的なバックアップの重要性は昔から絶えず言われ続けている。一般ユーザーレベルでのバックアップ先としては、パソコンの初期(1980年代)にはフロッピーディスク、さらにMO、CD-RやDVD-R、果てはBD-R等の光メディアへの保存か、近年は容量などの面から外付けHDDへの保存が一般化している。またサーバ用途で一般的に使われているSCSIを使ったRAID構成は、この問題に対する一つの回答であり、個人向けや家庭向けのRAID構成HDDが発売されている。また、ノートPCなどRAIDが困難な場合でも、ソフトウェアによるミラーリングも可能である。
ドライブの製造期間は短い物で3ヶ月、長い物で1年程度である。かつて通商産業省の指導により性能部品等の保存期間を家電メーカーらが自主的に定め遂行した例(メーカーによる製造終了後の保守部品保持など)はあるが、コンピュータを含む通信機器メーカーはその対象ではなかった。このため、パソコンメーカー等では修理部品の確保が難しい場合が多く、修理作業自体にかかる手間やドライブの価格低下が激しい事情も合わせて、故障した製品の代替の製品と交換することで対応する例も珍しくない。故障したドライブに記録されたデータの取り出しを行う専門業者も存在するが、かなり割高の代金となることが多い。また新興産業であるため、市販ソフトでしかチェックしなかったり、回収失敗時に他社で成功されて評判が落ちることを防ぐために、HDD返却時に意図的に破損させたりするなどの例もあるといわれている要出典。
ハードディスクドライブの寿命を延ばす方法は色々といわれており、例えばディスクが回転を続けていると発熱し、劣化を促進するため、冷却などによって温度を下げることが好ましいとされているが、方式によっては取った手段が逆効果になる場合もある。3.5インチタイプに多い電源断時にヘッドがディスク上で停止する製品は、起動と停止を繰り返すとヘッドの磨耗や、微粒子による悪影響が生じやすいが、デスクトップPCなど放熱に余裕のある装置に装着されている場合が多いため、PCの起動中はHDDの電源を切らない設定にしておくのがよいとされる。2.5インチタイプに多い電源断時にヘッドがディスク外の所定の位置で停止する製品は、起動と停止を繰り返してもさほど悪影響はなく、ノートPCなど放熱の悪い装置に装着されている場合が多いので温度が高くなりやすいため、こまめに非アクセス時に電源を切る設定にして温度上昇を押さえた方が良い場合もある。
編集 衝撃
ハードディスクドライブは転倒、落下等の強い衝撃を受けた場合、ヘッドが円盤面に衝突(これを一般的にヘッドクラッシュと呼称する)して円盤に傷が付いたり、モーター内のベアリングが変形したりしてデータの読み書きが不能となる場合がある。特に動作中の落下で故障しやすいため、携帯用途で使用されるハードディスクドライブを内蔵した製品を扱う場合は強い衝撃を与えないように注意を払う必要がある。また、希に落下したあとでも正常に動作する場合、そこでできた傷がごみとなり、それがハードディスクドライブ全体に行き渡って破損する場合もある。
輸送時などの衝撃による破損を防ぐため、ヘッドをディスクの安全な領域へリトラクト(retract。収納退避)させることが重要になる。例えばPC-9800シリーズなどの場合、電源を切る前にSTOPキーを押して手動リトラクトする習慣を身につけることが、ユーザーにとって一種の通過儀礼となっていた。やがて、電源を切った際にハードディスクドライブが能動的にリトラクト動作をするオートリトラクト機能を備えることが一般的となった。
一部のハードディスクドライブではこれを発展させ、加速度センサーを内蔵し、自由落下を検出すると電源を切らずともオートリトラクトして破損を予防する機能が付加された。PowerBookなどではディスク外部に加速度センサーを設け、同様の機能を実現している。これらの発展によりハードディスクドライブの用途は大きく広がり、2006年には東芝製の携帯電話「W41T」が0.85インチのハードディスクドライブを搭載した。しかしフラッシュメモリに比較すると、「消費電力が多い」、「小容量ではコスト高になる(2000年代後半以降のフラッシュメモリの価格下落が著しく、1インチ以下のクラスではコストが逆転した)」、「厚みがかさばる」という難点もあり、この機種以降、2010年春現在に至るまでハードディスクドライブを搭載した携帯電話は製品化されていない。
編集 制御基板
ハードディスク本体内部もさることながら、その制御基板の部品が焼損することなどで故障する例も多い。同一製品でも製造ロットごとに基板の部品構成が異なる例が多く、その場合はその基板を移植しても動作しないことが多いことや、メーカー側も基板交換の対応は行っていないことから、個人レベルでの対応は困難とされる。
編集 データ漏洩
コンピュータの処分時に、ハードディスクドライブに適切な消去作業を行なわないと中身のデータを部外者に盗みとられてしまう危険がある。適切な消去作業とは内部情報を完全に物理的に消去することである。
編集 論理的消去
操作者がファイルの削除操作を行ってもOSは通常はインデックス部に削除情報を書き込むだけで、記録情報の本体であるデータ部はディスク内にそのまま残され、「ゴミ箱」を空にしても一般的なファイル復元ソフトによって復元される可能性がある[8]。また通常のフォーマットもデータ部をクリアすることはしない為、復元される可能性がある。
編集 上書き
データ領域の残存データを完全に消去するには、データ領域に他のデータで上書きするのが手軽であり、1回の上書きではなく3回程度が確実とされている。1回だけではデータを上書きする際に、磁気ヘッドのトラッキングのずれによって僅かな磁気が残留する可能性がある。そのため完全消去には、3回程度の上書きが必要とされる(米国国防総省NISPOM規格)。ただし、この上書き後の残留磁気からデータを復旧することは、特殊な機材と専門知識を必要とする為、一般のユーザーや一般の復旧業者に行えることではなく、「理屈の上では可能とされている」というのが実際である。
詳細は「データの完全消去」を参照
編集 データ消去ソフト
そのため一般的な使用においては、売却・廃棄をする際はデータ消去ソフトで完全消去するのが望ましい。またハードディスクドライブ自体が故障してデータ消去できない場合でも、故障箇所によっては修理によってデータ漏洩する危険がある。また、火災や電子レンジなどで外見上破壊されていても、特殊な復旧機材を所有する業者に依頼すれば高額ながらもデータ復旧は可能である。過去にコロンビア号空中分解事故においてスペースシャトルコロンビア号に搭載されていたハードディスクのデータを、NASAがアメリカのデータ復旧業者(Kroll Ontrack Inc.)に依頼し、中身のデータをほぼ復旧したという事例がある。[9]
編集 物理的破壊
最も簡単には、ハードディスクドライブを物理的に完全に破壊する方法が確実である。現行製品の内部のディスク基板(プラッタ)の多くは強化ガラス製であるため、粉々に破壊でき、アルミ合金製の場合でも表面に満遍なく傷を付けるか、金ばさみで切断する等するとよい。外付けの場合は外装から内蔵用ハードディスクと同じものが取り出せる。一番簡易かつ確実な方法としては、粉砕器を利用して完全に粉砕することである。粉砕機は高価で持ち運びが困難であるためにドリルで穴を空ける方法を採る業者も存在するが、これでは完全消去には不十分である。ノートパソコンは以前はドライブを取り出すのは困難な機種が多く、ホームページを探したりして取り出す手順を探し出すしか確実な方法が無かったが、近年では物理的に破壊したい人のために簡単に取り出せるノートパソコンがほとんどである。
編集 暗号化
データを暗号化しておけば、たとえ物理的にデータを読み出されても暗号が解けない限りは情報の機密は守られ、紛失や盗難時にも有効である。
編集 今後の見通し
現在も年率40%で記録密度が向上しており、今後もデータ保存コストの低廉化に大きく貢献し続ける見込み。2009年頃からディスクリート・トラック媒体が導入される見通しで、さらなる容量密度の向上が見込まれる。しかし、高密度化の根本的な障害となっている熱揺らぎの問題を解決するものでない。他にビット・パターンド媒体、熱アシスト記録等の導入が検討されている。
HDD市場は今後数年間に渡って拡大が続くと予想されている。特に2.5インチHDDは伸び率が高く、2012年には出荷量が3.5インチHDDを追い抜く見込みである。逆に1.8インチHDDはフラッシュメモリの大容量化・低価格化に押されて急速に市場が縮小しており、今後も置き換えが進むと見られている。
編集 類似用途の記憶装置
- RAMディスク
RAMディスクは、コンピュータ上に搭載されたRAMの一部を、デバイスドライバ等によりHDDのように使用するものであり、古くパソコンではCP/MやMS-DOSの頃から利用されている。また、汎用ハードディスクドライブ等のディスク・ドライブと同様に操作出来るメモリディスク装置(電子ディスク装置)が汎用機(メインフレーム)用として1980年代から使用されているが、半導体メモリの価格低下に伴い一般向け装置も登場し、普及して来ている。
- ハイブリッドHDD
不揮発性のフラッシュメモリとHDDを1つに組み合わせたハイブリッドHDDがある。これにより低消費電力で読み書き速度性能と耐衝撃性も向上したとされるが、高価なため流通量は少ない。
- Flash SSD
Flash SSDは、RAMディスクと同様にシリコン記憶素子をHDDとして使用するが、揮発性のDRAMより構成される主記憶の領域を使用するのではなく、フラッシュメモリを使用した単独の記憶装置であり、PC用(特にネットブックやノートパソコン向け)やサーバー機での使用が進んでいる。
編集 主な製造企業
編集 シェア
2008年10月-12月の世界でのハードディスクドライブの出荷台数シェア[10]は次の通りである。
| Seagate | 31.7% | |
| Western Digital | 26.0% | |
| HGST | 17.1% | |
| 東芝+富士通 | 17.0% | |
| Samsung | 8.2% |
編集 現在製造を行っている主な企業
- シーゲイト(Seagate)
- 最大手のHDD専業メーカーで、3.5インチ型を主力とする。2005年暮れに当時の有力メーカーMaxtor(3.5インチ型のサーバ向け・デスクトップ向け共に3位)を19億ドルで買収、両社合わせると2005年はデスクトップ向け3.5インチ型で40%超、サーバ向け3.5インチ型では66%を占めた。2003年からはモバイル向け2.5インチにも再参入し、総合HDDメーカに返り咲いている。
- ウェスタン・デジタル(Western Digital)
- デスクトップ向け3.5インチ型及びモバイル向け2.5インチ型を扱うメーカー。過去にはサーバ向け(SCSI)の製品ラインナップもあった。同社はATAコントローラーの開発メーカーであり、現在でもシリアルATAでは唯一10000回転のHDDとしてRaptor(ラプター)シリーズを販売している。また、逆に回転数を低く設定し、読み書きの性能よりも省電力をアピールした低価格製品も販売している。2005年はデスクトップ向け3.5インチ型で旧Maxtorを抜いてシェア2位(約20%)に浮上した。
- 日立グローバルストレージテクノロジーズ(Hitachi Global Storage Technologies)
- 略称HGST。2003年1月に日立製作所とIBMのHDD事業部門が統合して誕生した総合HDDメーカー。日立製作所も古くからSCSIを中心にHDDを製造していたが、製造量は少なかった。このため、経営主体は日立であるが、実質的な市場シェア等はIBMから引き継いだところが大きい。モバイル向け2.5インチ型ではトップシェアを維持しているが、2003年の統合当時(61%)に比較して、現在は25%以下まで数値を落している。1.8インチモデルは生産撤退を表明。赤字経営が続き、事業譲渡計画がいくつかあったが、現在は自主再建を目指し、2008年には営業黒字を発表。3.5インチ型はMFPやDVRなど日本製電化製品で大きなシェアを持つ。
- 東芝
- モバイル向け専業メーカー、小型化技術に定評がある。モバイル向け1.8インチモデルは富士通やHGST等の撤退によりサムスン電子と2分する状態。モバイル向け2.5インチでも比較的上位のメーカーである。近年はシェアが低下(2007年では4位)していたが、2009年に富士通のHDD部門を買収したことで、20%程度への回復が見込まれている。
- サムスン電子(Samsung Electronics)
- ハードディスク分野では2001年頃から台頭してきたが、過去には、製品として1992年頃にIDEのHDDを出荷していたことがある。ヘッドやプラッタなどの基幹部品を外部からの購入に依存するメーカーだが、1.8インチ製品では、現在では実質的にサムスン電子と東芝だけとなっており、その分野でのシェアは高い。3.5インチ型と2.5インチ型の製品価格が安く、ウェスタン・デジタル等のローエンド製品と競合している。トータルのシェアは高くないが、外付けHDD製品では比較的多く使われており、日本ではアイ・オー・データ機器やバッファローなどが採用している。また、エプソンダイレクトなど一部のノートPC等で採用されている。
- パナソニック四国エレクトロニクス(旧松下寿電子工業)
- 1994年から2002年までは旧Quantum社のOEM生産を一手に担っていた量産メーカー。一時HDDの生産が途絶したが、2003年に東芝と技術提携し、現在は東芝ブランドの2.5インチや1.8インチなど小型HDDの生産を行っている。ライナーの技術開発に優れており、メーカ各社にライナーのレシピをライセンス提供している。自社ブランドのハードディスクドライブは製造していない。
編集 要素部品の製造に関係するメーカー
プラッタを製造するメーカーとしては、昭和電工、HOYA、富士電機などがある。これらのメーカーは完成品としてのドライブは製造していないが、ハードディスク・メーカーに部品を供給している。完成品のHDDを製造できるメーカーでガラスプラッタを自社生産出来るのは、シーゲート、日立グローバルストレージテクノロジーズ、ウェスタン・デジタル(2007年コマグ社を買収)の三社で、他社はプラッタ製造メーカーから納入を受けている。ただし、自社生産できるメーカーも、供給安定のために自社のプラッタと併せて利用している。
その他、TDKが磁気ヘッド部分の製造と提供を行っている。TDKはアルプス電気より製造設備と知的財産権(IP)の譲渡を受け、高いシェアを持つ。完成品のHDDを製造するメーカーでは、シーゲートや日立グローバルストレージテクノロジーズ等が自社生産を行っている。垂直磁気記録方式では、従来以上にヘッドとメディアの“すり合わせ”による微調整が重要になるため、自社生産は強みとなる。
また、プラッタを回転させるモーターに関しては、JVCモーター(2008年2月22日に日本ビクターが事業部を会社分割、売却)などがある。
編集 過去に製造を行っていた主な企業
- コナー (Conner Peripherals)
- HDDドライブ等に用いられるIDEインタフェースをコンパック(Compaq) と共に開発したことでも知られる。1996年にシーゲイトに買収された。なお、Conner Technologyは、その後に設立された別企業。
- クアンタム (Quantum Corporation)
- 一時は世界シェア2位に君臨していた有力メーカー。パソコン向けにはLPSやFireballなどの、サーバ向けにはAtlasやVikingなどのブランドがあった。HDD部門が2001年にマックストアと合併され、HDD事業から撤退。一部のブランドはマックストアに承継された。ストレージ関連企業としては存続している。
- マックストア (Maxtor)
- 技術力に定評があり、業界のリーダー的な地位にあった有力メーカー。シェア拡大を目指してQuantum社を買収したが、上記シーゲイトの項にあるとおり、2005年にシーゲイトに買収された。ATA100の次世代としてATA133規格の策定を主導し、シーゲイト、ウェスタンデジタルやサムスン電子に採用された(日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)には当初採用されなかったが、SATA規格HDD登場後に採用され、最終的にほぼ全社に渡って採用された)。
- ただしシリアルATAへの普及を目指すインテルには支持されずインテルはATA133をサポートしていなかったため、ATA133として動作させたい場合はVIAなどの互換チップセットを使う必要があった。
- IBM
- 1956年発売のRAMAC350 DiskStorageから現在のHDDの歴史が始まったと言われる老舗メーカー。以降、長らくHDD技術の先導役を務め、一般的なアルミニウム合金以外では、唯一実用化されたガラス製プラッタを用いたHDDを開発したことでも知られる(イメージに反し、耐衝撃性ではアルミ合金より優れていた)。2003年にHDD事業部門ごと日立製作所に売却し日立グローバルストレージテクノロジーズとなった。(詳細は IBMのディスク記憶装置 を参照。)
- エプソン
- SCSIハードディスクドライブメーカーとして、国産パソコン内蔵用にOEM提供していた。国産パソコン市場がPC/AT互換機により一掃されてしまったことにより(パソコン向けSCSIドライブ市場の実質消滅・大容量化に追従できず)、ハードディスクドライブ事業から(後にフロッピーディスクドライブ事業からも)撤退。後に親会社の諏訪精工舎と合併しセイコーエプソンとなる。
- 日本ビクター
- 1990年前後より2.5インチHDD等小型HDDを生産していた。HDD事業撤退後もプラッタ用モーターの製造販売をJVCブランドで行っていたが、現在では事業を会社分割し、売却された。
- 富士通
- サーバ向け3.5インチ型とモバイル向け2.5インチ型のメーカー。2001年まではデスクトップ向け3.5インチ型も製造しており、当時日本で唯一の総合HDDメーカーだった。しかし激しい価格競争で採算性が悪化したデスクトップ向け3.5インチ型(IDE)から撤退、採算が良く成長市場であるサーバ向け(SCSI)とモバイル向け2.5インチに特化した。このため、当時は富士通がHDD事業から撤退したとの誤解も見られたが、2005年の時点でもサーバ向け3.5インチとモバイル向け2.5インチで、それぞれ20%台のシェアを保持する日本最大のHDDメーカであった。また、主要部品である磁気ヘッド、プラッタ(ディスク)を自社で製造する数少ないメーカーでもあった。近年激化した価格競争による経営の悪化を受けて、2009年にHDD事業を東芝へ譲渡し、HDDメディア部門を昭和電工に譲渡し、事業撤退を表明。
他にも、NECや富士電機、アルプス電気なども製造していたが、1990年代中ごろには撤退している。
編集 脚注
- ^ HDDが21世紀現在、固定ディスクと呼ばれることがあるのは、概ね取り外しに手間がかかりほとんど固定されて使用されるためや、PC環境でのCD/DVD/BD-DVDとの対比が原因だと考えられる。HDD単体や外付けHDD装置ではSATAやUSBによって容易に脱着できるようになると同じHDDでも固定ディスクと呼ばれなくなる。
- ^ JEITA. “2007年情報端末関連機器の世界・日本市場規模および需要予測”. 2008年10月23日閲覧。
- ^ 3.5インチ型ではHGST、WDが採用。2.5型ではすべてのHDDが採用している。
- ^ その多くは半導体プロセス技術の進歩の恩恵を受けている。その応用例の一つとして、IBMが発明したPixie Dust技術(反強磁性結合メディア、AFCメディア)がある。これはディスク表面の磁性体の上にルテニウム原子を3個コーティングして、さらに磁性体でコーティングしてサンドイッチにした物である。この技術は2001年、1平方インチあたりの記録密度を100Gbitに高める可能性を示し、同技術の改良版によって2002年100Gbitに達する製品を実際に発売した。その他に、2002年に富士通がディスク表面に微細な凸凹(テクスチャ)を施し磁性体の表面積を大きくし、記録密度を高める技術を発表した。東北大学の岩崎俊一博士(現東北工業大学学長)が1977年に発明した垂直磁化記録方式は、理論上では水平磁化記録方式よりも安定して高密度化できるが、いくつかの技術的困難があった。2005年に東芝が実用化し、今日の超高密度記録を実現している。さらに東芝では、この垂直磁化記録方式のプラッタに溝を加えることにより磁気の相互干渉を抑えてさらなる記録密度向上を狙ったディスクリート・トラック・レコーディング(DTR)技術、パターンド・メディア・レコーディング技術が開発された。現在実用化に向けて研究されている。
- ^ 関西大学システム理工学部では保護膜上の潤滑膜層の形成に「電圧印加ディップ法」を使い、現行の1.6-1.8nmから1.1nmへと薄膜化することで磁気ヘッドの浮上量を2nmから1.4nmへと小さくすることで面記録密度を現行品(400GB/inch2)の2倍以上の1TB/inch2にまで向上させるとしている。(Nikkei Electronics 2009.6.15 p14-15)
- ^ 日立製作所の技術開発により、クーロンブロッケード異方性磁気抵抗効果が発表された。これは1平方インチ当たりの記録密度を現在の5倍、1Tbitに引き上げるものとされる
- ^ 2009年現在、単体で2TB(ドライブの表記上は約2.2TB)を超えるドライブは販売されていないが、RAIDで組み合わせると2TBの壁に到達する。ちなみに2TBドライブの実容量は約1.8TB
- ^ 論理的消去の直後であればファイル復元ソフトによってほとんど100%が復元されうる。
- ^ Scientific American記事(英文)[1]
- ^ HDD出荷台数シェア:朝日新聞 2009年2月18日 経済面より (テクノ・システム・リサーチ調べ)
編集 関連項目
- 磁気ディスク装置
- 転送速度
- Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology (S.M.A.R.T.)
- RAID
- SAN
- NAS
- ファイルサーバ
- (Flash)SSD
- マイクロドライブ
- ハイブリッドHDD
- Advanced Technology Attachment
編集 外部リンク
